平成26年度予算要望

今、世田谷区は、大変重要な変革期にさしかかっていると感じています。それも、良い方向への変革とは必ずしも言えないのです。残念です。これまで世田谷区が、長い間区民と共に培ってきた財産、資産というものが、溶けてなくなっていく。そのような感覚にとらわれてなりません。日本全体が、人口減少社会に突入し、経済も人口も縮小していく傾向の中で、地域社会が今後、どのように変わっていけばよいのか、そのビジョンこそが問題なのです。

しかし、世田谷区行政としては、将来にわたるビジョンを明らかにしていないのではないでしょうか。確かに今後の経済状況は見通しが暗い、区の財政も厳しくなっていく、さらに高齢化は進展する・・このような現状、見通しであるからこそ、区民生活を守る地方政府としての世田谷区は、区民が安心できる、地域・地区の将来像を示していかねばなりません。基本構想、基本計画が議決・策定されたものの、区民の日常生活への安心・安全への不安は払拭されません。

私は、「歩いて暮らせるまちづくり」を目標としています。歩いていける範囲内で日常生活がまかなえる、楽しいこともできる、見知りあった人たちの中で、安心して暮らしていける地区こそが、求める地区像です。なぜ、このように考えるかといいますと、私は、生きていく基本に、「自立」ということを置いているからです。「自立」は、すべての基礎だと思います。

世田谷区全体としての自立、地区の自立、個人の自立を考え方の基本とします。努力する人が報われる社会を実現しなければなりません。そのために、基礎自治体として本当に必要なことは雇用と教育です。雇用を促進し、家族を助け、子どもが育つための基本的ニーズに応えること。福祉をあくまで自立に至る道の途中駅と考え、基本方針も

  1. 生活保護ではなく勤労を
  2. 依存ではなく自立を促すための仕組みの整備

と捉えることです。

さらに、現在の世田谷が直面しているのは社会の変化への対応です。新しいまちの姿を創っていかなければなりません。世田谷の都市の性格をベッドタウンから自立型都市へ移行させていくのです。力強い世田谷になるためには、

  1. 地域社会という真理をよみがえらせること
  2. 地域が皆の信頼に基礎をおいた仕組みとなること
  3. 個人の利益を超えた共同社会のルールに区民一人ひとりが貢献すること

が必要です。

さらに、自立とはいっても、自分の思い通り勝手に行動していく、ということではないはずです。共同生活を営んでいるからです。そこで、地区でのルールづくりが課題となります。人は、自分ひとりで生きているものではありません。どのような形であれ、共同生活というものの中に存在しなければならないのです。すると、当然のことながら、共同生活のルールというものを、皆が尊重し、守っていかなければならないのは当然です。そのルールも、時代によって変わっていくことは当然ですが、社会を支える基礎の単位であることから、当然、守らなければならない重要な要素があることは当たり前です。私は、子どもの元気な声というものは、健全な地域社会、明るい未来を感じられる地域社会にとって、欠くことのできないものと考えます。これらについては、区として、基準となるルール作りを行うべきものと考えます。

都市の発展に対しては、「選択と集中」です。その方針を明らかにし、区はその流れがより強くなるよう、基盤整備等に努め、民間活力を最大限活用することです。「福祉とまちづくり」を世田谷という大都市の発展に向けた車の両輪とし、連携させていくことです。政策の基本には、セーフティネットではなく、健全なものを据え、それがなお発展していくような地域の仕組みづくりを明らかにすることです。その上でその流れからこぼれ落ちる人々を徹底的に救い上げ、元の流れに戻していくのです。原則として自助努力です。セーフティネット(例えば生活保護、虐待対応など)は必要不可欠なものですが、これを政策の中心に据えると、社会が発展しなくなります。地域内の循環を図っていくこと。そのために、特に商店街や産業団体が自ら努力することとし、行政は側面的に助けることが必要です。

さらに、「歩いて暮らせるまちづくり」を支える行政の仕組みが大切です。全国にも誇るべき、世田谷区独自の地域行政制度は、本庁、地域、地区という3層構造があればよい、というものではありません。超高齢化、そして認知症への対策、災害対策を踏まえて、自治体経営の中心に、地区を据えるべきなのです。88万大都市、一部の県レベルの規模を保ちながら、地区を基本にきめ細かな行政を行っていく、これが世田谷区の特色なのです。もっとも小さな単位である地区とは言っても、人口規模は、3万から5万程度、あの南三陸町(人口1万2千人)の数倍の規模を持っているのです。この地区において、区民が存分に生活を楽しみ、基本的な役所の手続きはでき、安心した生活が営める、これが、目指すべき、まちの姿です。

区は、10月25日号の、広報「区のおしらせ」において、地区レベルで基本的な福祉サービスが受けられる、という地域包括ケアシステムの実施を表明されました。この仕組みは、何もかも行政に頼るのではなく、まさに、区民が自立するために支援できるための仕組みのはずです。この仕組みを早急に、全区に広げなければなりません。この仕組みを真に役立たせるためには、もちろん、人材の充実が不可欠です。

そこで、私は、現在、地区に配置されている、各部門、関係機関の職員を再配分するべきと考えます。計算すると、1地区あたり、40名を超える人材が地区に配属されているのです。区が行うべきことは、まず、この地区レベルでの縦割りに配置されている人材を再配分することです。区は現在、総合支所に総合窓口なるものを整備しようとしていますが、地区レベルの充実を最優先で実施しなければならない区に果たしてそのような余裕があるのでしょうか。区は、優先順位をはっきりと見定めて、的確に行政運営を行うべきなのです。

認知症対応が喫緊の課題です。財源、人材もより厳しい状況となる中で、各自治体がありとあらゆる創意工夫をしなければなりません。世田谷は、そのためにも、地区レベルの組織をいかに早く充実させていくことが大切なのです。私は、このことから、誤解を恐れずに、あえて、「安心して徘徊できる地域社会づくり」ということを主張しています。そのためにも、地区レベルの機能充実は、避けて通ることができません。まずは、地域包括ケアの中心となる、あんしんすこやかセンターと、地区のコミュニティづくりの中心となりうる児童館、この二つの機能の総合支所への早急な移管を行うべきです。

区の大胆な政策決断を求めます。これらを支える上でも区役所の内部的には、大胆なリストラを断行することです。特に内部事務を委託・非常勤化し、経営資源、つまり人材を現場に振り向けること。現場を持っていることが区の強みであるからです。

以下、個別のテーマについて、具体的に示します。

  1. 適正負担問題
    財政健全化に向けて、今一度、費用と負担の適正化について、抜本的な見直しをすすめていく。(各種事業の有償化を含む)
  2. 将来を見越し、財政負担の増大の観点から、義務的経費とも思われている基幹事務についての抜本的な対応改善
    生活保護システムを抜本的に見直し、就労支援を今以上に位置づけ、自立に向けた成果を出していくとともに経費の縮減に努めていく。
    介護保険事業については、高齢化が進展する中でも積極的に要介護度の改善に向けたさまざまな取り組みを行い、目標数値等を持ちながら、健康状態の向上を図り、保険事業全体の経費負担の軽減を図る。
    国民健康保険についても、区民の健康度を上げるさまざまな取り組みが保険給付金の減少につながるものと明確に位置づけ、より効果的な施策を展開し、国保会計の経費軽減を図る。
  3. 歩いて暮らせるまちづくりについて
    すべての施策の中心、かつ、地区の将来像として「歩いて暮らせるまちづくり」を基本のビジョンとして様々な政策、事業を組み立てていく。
  4. 地区ビジョンの策定
    今後の地域、地区の超高齢化の進展を踏まえ、地区がどのような姿であることが望ましいか、そこにはどのような施設機能が必要か、などを中長期ビジョンとして考え、実現の方策を考え出していく。お元気高齢者対策が区民生活領域に移管されたことも踏まえ、地区でのお楽しみ機能や入浴機能も充実していく。
  5. 地区、地域での行政サービスのあり方について
    自治体経営の中心を地区に置き、新たに、地区経営という柱をたて、責任者を設置すべき。その責任者の下で、福祉・防災を含めた地区の様々な区民活動がより盛んになるような支援を行うべきである。
    総合支所には、あんしんすこやかセンター、児童館を所管換えして支所長の権限を高めると共に、支所内の組織についても、地区が十分に機能するような組織改正を行うべきである。
  6. 適正なコミュニティのあり方、規模
    行政がサービス供給の最小単位として考える地域コミュニティの適正規模が小学校単位であるか、それより大きいものを想定するのか。現在の行政地区単位、通学区域、町会区域等がこれまでの経過からそれぞれ異なっていることについて今後の地域のありようを考え、統一を図っていく。
  7. 町会・自治会加入促進について
    まず、町会・自治会の民主的な活動、組織作りを支援し、その上で、町会・自治会活動のうち、地域の課題を解決する公共的な活動を支援する。それと同時に区民に参加することを促し、これらを条例化することとする。集合住宅については、まず自治会組織化を促し、さらに町会連合会等への参加を促進する。
  8. 区民一人ひとりの自立に向けて
    生活保護該当者への積極的な政策展開による自立支援
    お元気高齢者の尊厳を尊重した地域生活支援
    現在、区内1箇所で行われている生涯現役大学の活動を、各地域で、総合支所との連携の下に、多様に展開していく。
  9. 区民生活を支える産業振興のあり方
    産業振興は、自治体の自立に向けた最重要課題と位置づけ、都市型産業の誘致、起業を含め積極的に支援し、区内の雇用の拡大を図る。
  10. 公共施設整備のあり方
    原則として地区・地域ごとに総合型施設整備。合築だけでなく、区民視点での機能の統合を進める。(特に区民分野と福祉分野)不要な土地については積極的に売却する。
  11. 自治体として本来備えなければならない施設の整備
    火葬場を、自立して地元で一生懸命生きてきた人生の最終ステージの事柄を執り行う機能として位置づけ、区内整備について、十分な検討を進めていく。
  12. 道路整備
    世田谷の50年後、100年後を想定して、次の世代への責任を果たす観点から、都市の基盤となる道路整備について実行可能な計画のもと、区民の理解を得ながら整備に努める。
  13. 地区でいつまでも安心して暮らせる住み替え可能な住宅政策
    住宅に困る人たちが居る一方で、一人暮らしや、空き家問題など、大都市特有の住宅問題が今後益々発生してくる。
    世帯構成や年代等により、求められる住宅の機能は変化していく。いつまでも安心して住み続けられるよう、地区の中において、住み替えが可能となる住宅政策を確立していくべきである。
  14. コミュニティ交通のあり方
    誰もが安全で快適に移動できる権利を有していることから、区内でのコミュニティ交通のあり方を再検討し、実現への方策を考える。
    特に交通不便地域でのバス運行時間の延長については、早急な実現を果たすべきである。
  15. 地区での安心安全を確保する仕組みとしての駐在所
    今後、益々人口が増加してくる地域においては、安全安心まちづくりを徹底し、転入してくる区民との健全な関係を保つことからも、駐在所の重要性が高まってくる。緊急時への対応も鑑み、身近な地元において駐在所の整備が可能となるよう、区としても努力すべき。
  16. 義務教育として何が世田谷育ちの子どもにとって必要な資質かの検証
    特に基礎学力と、いわゆる「読み書きそろばん」を重視していく。区立小・中学校への進学率の向上に向けて全力を尽くす。